私たちの暮らしの中で、好き嫌いはあってもキャッシュレスはしっかり根付いています。
カード払いや電子マネーというサービスです。日常のショッピングや日用品の購入では現金を持ち歩かなくても買い物ができる社会が形成されています。
ところが、例えば不動産業界やマンション管理業界など、いわゆる住まいに関する業界ではキャッシュレスがあまり普及していないという実態もあります。
賃貸マンションの家賃は現金振込みが普通ですし、マンション管理の世界でも管理費等を自動決済(引落し)し、決済できなかった場合は後日振込みとなります。
集会室使用料や来客用スペースの料金など不定期に発生する費用は管理事務室に現金を持参するマンションも多いです。
現金を取り扱うと必ず問題となるのが、現金の紛失、使い込みです。
大手管理会社などでは、管理事務所等で現金を一切取り扱わないよう運営しているマンションもあるようですが、まだまだ「やむを得ず」現金を預かるケースも多く、なかなかキャッシュレスが浸透していないのです。
そこで、大手管理会社をまとめる一般社団法人マンション管理業協会では昨年、「マンション管理事務室における現金のカード決済化推進事業」を行い、運用のメリットデメリットおよび課題などの検証を行いました。
結果は、せっかく対応する機器を準備してもあまり利用者はいなかった、というオチでしたが、同時に実施したアンケート結果は参考になる部分がありましたのでご紹介します。
築年数や回答者の年齢にはほぼ関係なく、皆さん街中ではクレジットカードや電子マネーを使用しています。
管理室でカード決済を利用しないことについては特に理由はなく機会がないだけで、利用した人は便利なので今後も利用すると回答しています。
つまり、仕組みがないため利用していないだけのようです。
一方、サービス提供サイドは課題山積で、機器のコストを考慮すると提供が難しいという現実的な問題のほか、決済の仕組み(別精算に未対応など)にも整備が必要のようです。
日本はアジア諸国に比べてもキャッシュレス化が遅れていると言われており、利便性の向上や事故の防止のためにも業界を挙げての取り組みが望まれるところですね。
(石井孝典)