このテーマを取り上げないわけにはいかないと思います。日経新聞にも大きく取り上げられた理事長解任のテーマについて、私なりの見解を書きたいと思います。
平成29年12月28日、最高裁は、理事長解任の理事会決議は無効という2審までの判決を破棄し、正反対の判断と審理を高裁に差し戻す判決を下しました。
これは福岡県のマンションで、理事の互選で選任された理事長がその後の運営方法で理事会と対立し、理事会決議で理事長を解任された後、総会で理事を解任されたのは違法だとして総会決議の無効確認を求め管理組合を提訴した事案です。
標準管理規約に準拠している管理規約の場合、役員は総会で選任され、役職は理事会決議(互選)で決めることになっていますが、解任については規定がありません。
こちらのマンションでも標準管理規約に準拠した規約となっていました。
そこで2審までは、「総会で選任された役員を理事会決議で解任することは予定されていない」として元理事長の訴えを認める判断をしてきました。
ところが、最高裁は、「理事長という役職は理事会決議で決まったものだから理事会決議で解任も可能とするのが区分所有者の合理的意思に合致する」と正反対の判断をしたわけです。
このように簡単にまとめてしまえば何か当り前の感じがしますが、実はこの問題、結構奥が深いように思います。
例えば、理事長が横領などの不正を働き解任される場合は本人を含め誰も反対しませんから理事会判断で職をはく奪されるのが普通の運用です。
(ただし、理事長=管理者のため、管理者変更の上程とその事情報告のために臨時総会を開催することになります。)
ところが理事同士の運営方針の違いで理事会が二分したような場合は、理事会だけで理事長を解任するとなると単に内紛にしか見えず、不審の声と対抗勢力が内外から噴出しますから、最終的には全区分所有者を巻き込んだ(つまり総会での)決着のつけ方が普通となるのです。
つまり、理事長の解任は他の理事会決議事項と同じように簡単に過半数で決議する内容とは思えず、私個人としては2審までの判断に違和感を感じていたわけではありませんでした。
ですがこの度、単純といえば単純な見解かもしれませんが、最高裁で正式な判断が下されたのですから、今後、理事長を解任することのハードルが下がったのは間違いありません。標準管理規約でもいずれこの規定が明記されるのだと思います。
こちらのマンションの元理事長、負けを認めたくなかったので対抗手段に出たのでしょうが、仲間を作って民主的に行動すればもう少し別の結果が出たような気がしますね。
何とも後味の悪い判例を残してくれた気がします。
理事長のスタンドプレーが許されないのは今も昔も変わりませんが、運用の厳格化により、理事長には今後、一層の丁寧な組合運営の執行が求められることになりそうです。
(石井孝典)