平成29年6月16日、国土交通省から「外部専門家の活用ガイドライン」が公表されました。

 これは、昨年3月のマンション標準管理規約の改正等を受け、マンション管理士等の外部専門家を役員として活用する場合の具体例や注意点を示すものです。
 私たちマンション管理士会としても大変興味深いものです!

 そして少し補足しますと、このガイドラインは理事長の担い手確保に苦慮している、または修繕積立金の値上げや滞納金の回収が必要などの管理不全マンションになることも想定されるマンションを対象としており、管理会社との管理委託契約を締結している既存マンションを前提としています。投資型マンションや新築マンション等は対象としていません。

 目を通すと結構詳細に作成されており、専門家選定の進め方・手続きに始まり、候補者の選定方法、外部専門家の業務内容・契約書、適正な業務遂行の担保・組合財産の保護措置まで記載されています。
 契約書の例示まで含めれば、A4サイズにぎっしり34枚のボリュームです。

 中身については、外部専門家に丸投げにせず業務執行状況の監視が必要、とか、外部専門家にいわゆるリベートやマージン等の不透明な利益の収受を行わないよう約束させる、とか、金銭事故が起きた場合の担保として賠償責任保険への加入を義務付ける、などのまあ当然の内容というか、ガイドラインがなくても普通に確認すべき内容となっています。
 まともなマンション管理士なら当然、それらを前提とした業務提案を行うでしょうが、そうでない管理士も存在するかもしれず、管理組合からの視点では参考になると思います。

 ところが、手順や方法などについては十分な記載量だと思いますが、肝心の費用については触れられていません。

 費用対効果が重視される投資型マンションなどでの意思決定ではテーマとならなくても、このガイドラインのような居住用マンションでは、報酬に対する考え方が議論となりやすく、一定の記載があってもよかったのではないかと思いました。

 外部専門家は当然ビジネスとしての参画ですから、顧問契約等通常業務と比較して責任加重分の報酬額を求めると思います。

 管理組合にとってのその費用追加は、(高品質のサービスが求められている)時代の変化として必要なのか、ニーズの高まりとともに許容されるものなのか、管理不全に陥ると組合はどのように困るのか、そのあたりの記述が欲しかったように思います。

 そして国として、外部専門家を活用することで国や管理組合が幸せになれるのか、この新制度を推進するのか、考えを聞かせてほしかったです。

 そういう意味では少し物足りないガイドラインだったかもしれません。
 ガイドラインは、国土交通省のホームページからご覧いただけますので、興味のある方は是非ご覧ください。

(石井孝典)