太平洋戦争後の高度経済成長期には、地方から大都市へと人口が流れ、サラリーマンの数が増えました。この時代の住宅購入は、「住宅すごろく」と呼ばれるステップアップ型でした。賃貸アパートから始めて、小さな家を買い、より良い家を買い替え、最後は理想の庭付き一戸建てにたどり着くというものです。給料が上がり、住宅価格も上昇し、買った金額よりも高く売れることが前提でした。
しかし、いつの間にか「低経済成長期」に突入し、「失われた〇〇年!」と言われるようになりました。給料は上がらず、非正規雇用の増加、先祖伝来の田地や家を守ることが困難な時代となりました。限界集落や過疎化が進む一方で、大都市圏に人口が集中しました。このような時代に、大都市圏で年収の何倍もの住宅を購入するには、35年のローンが当然です。かつての「住宅すごろく」は崩壊しました。今では、「一生に一度の住宅購入!」というのが、35年ローンで住宅を購入した人の考え方ではないでしょうか。40歳で住宅を購入しても、完済できるのは75歳です。35歳でも完済は70歳になります。
マンションは、かつて「住宅すごろく」のステップアップの一つであり、「あがり」ではありませんでした。しかし、国土交通省のマンション総合調査では、「永住するつもり」が1980年に22%だったものが2018年では52%に増え、「いずれは住み替える」が57%から17%に減ったことが分かります。マンションは、「住宅すごろく」の「あがり」に変化してきたことが伺えます。
そのマンションにも問題が顕在化してきました。マンション建て替え問題や二つの老い問題です。しかし、まだまだユーザーやデベロッパーの関心は極めて希薄です。特に老朽化したマンションは、適正な値段で売却することが困難となり、立地条件の悪いマンションは競売でも売却困難な事案が発生しているようです。そこに発生するのが空き家問題や管理費の滞納です。マンション問題は尽きることがありません。
(岡廣樹)