一昨日は3月11日。新聞やニュースで東日本大震災関連の情報を見聞きし、今年も災害に対する思いを再確認しました。
さて、災害といえば地震への備えという考え方が代表的で、つい耐震改修や非常用備品などの話題になりがちですが、別の視点も存在します。
したがって、今回は少し視点を変え、マンション立地として大人気の都市での災害にスポットを当ててみたいと思います。
都市に居住するということは、人口集中と施設の高層化・高密度化に直結します。
人口が集中すると当然、利便性や効率性確保のため建物や施設が高層、高密度化しますし、用地確保のため、埋立地など軟弱地盤の土地も活用することになります。
さらに、地下空間への進出にもつながり、狭い範囲に電力、ガスなど莫大なエネルギー源が内在することになります。万一の場合には大変なリスクになります。
また、都市は一斉に形成されるわけではありません。徐々に形成されるものですから住居や施設の建設時期はバラバラで、古い建築物と最先端の建築物が混在しているという特徴があります。
既存不適格建築物や緊急車両侵入不可能道路の問題があるわけです。
そして、最大の特徴として認識すべきなのが人間関係の希薄化です。
数は多くとも濃密な人間関係を遮断できるのが都市の魅力といえますし、夜間人口と昼間人口のギャップに見られるように仕事場としての側面もあります。
さらに流動性が高いレジャーや出張などの人たちも加わるため、人間関係が形成されにくい要素が満載です。
では、都市に滞在する中で地震が発生すればどうなるでしょう。
人が多ければ避難などの統制が難しくなります。緊急物資等の必要数も莫大になりますし、交通渋滞により必要数を必要な場所へ届けるのは大変な困難が予想されます。
地下や駅ナカなどでは限られた非常口に一気に人が押し寄せ、パニックが発生するかも知れませんし、埋立地では液状化が発生し、生活インフラがガタガタになるでしょう。
そして、都市は集中豪雨の懸念もあります。温暖化やヒートアイランド現象によって、昨今は過去のデータがあてにならないほどの集中豪雨が発生しています。下水管の排水能力が足りなくなって、道路が冠水するなど別に珍しいことではなくなっています。
さらに悪いことに、都市の成り立ちには河口付近(海抜の低い土地)に形成されやすいという特徴があるのです。
とにかく怖いです。
奈良県は全国有数の県外就業比率の高い地域であり、帰宅困難問題というものもあります。
それでも、大都市じゃないだけ何となくホッとした感情もありますね。
最近はマンション立地の都心回帰など都心へ住むことがもてはやされている傾向にありますが、都市の落とし穴というか、利便性一辺倒でいいの?という気がします。
(石井孝典)