8月29日、国土交通省は住宅宿泊事業に伴う「マンション標準管理規約」の改正を公表しました。
 これは、住宅宿泊事業法が成立したことに伴い、いわゆる民泊を認めるか認めないかを管理規約で明確に規定せよ、という趣旨です。

 住宅宿泊事業法が施行されると(現在は公布のみ)、一定の規制が課されますが都道府県知事に届出をすることにより誰でも民泊事業が可能となります。
 民泊のハードルを下げ、空室の有効利用とひっ迫するホテル不足を補うための措置です。

 私が現在携わっているマンションはすべて民泊拒否のスタンスということもあり、マンションの資産価値云々の議論は今回は置いておきますが、ここで気になるのが、すでに総会等で民泊禁止の方針を決議している場合、今後、わざわざ規約の変更(特別決議)まで行う必要があるかどうか、という点です。

 というのも、民泊禁止を細則(普通決議)として制定したマンションの管理会社から細則を規約に格上げすべきではないか、と相談を受けたのです。

 この点について考察しますと、まず、今般改正された標準管理規約の第12条関係のコメント4に、『新規分譲時の原始規約の場合に使用細則に規定することも可能』という記載があります。
 新規分譲時に制定可能であれば、通常の規約見直し時に使用細則に制定することも構わないように思います。

 また、管理規約と使用細則との一般的な住み分けとして、ペット飼育の可否や事務所使用禁止など専有部分の使用に関する基本的なルールは管理規約に、共用部分の使用については使用細則に、と言われていますが、ペット飼育禁止などは使用細則で規定されているマンションも多く、裁判例等では特にそれらを区別していないようです。

 したがって、使用細則に民泊禁止を規定しても特に問題はないような気がしますが、さらに調べてみますととても気になる情報が見つかりました。

 『過半数の賛成で可能となる使用細則による専有部分の使用制限については、決議要件としてハードルが低く、法的に無効となる可能性が高い』と東京の弁護士法人のサイトに記載があります。
(ページの下の方です。)

【管理規約・使用細則|民泊禁止条項×有効性・ハードル】

 つまり、民泊を禁止する場合、訴訟等により司法の判断を待たなければ最終結論は出ないが、基本的には管理規約で禁止しておかなければ万一のこと(管理組合が敗訴すること)もあり得る、ということのようです。

 やっぱり民泊禁止は、問題が大きくなる前に特別決議を取得して管理規約に規定しておいた方がよさそうですね。

(石井孝典)