厚生労働省発表の有効求人倍率が1.5倍を超えており、人手不足が深刻化しているようです。
 マンション管理業界でも事情は同じようで、管理員さんの募集がなかなか集まらないという嘆きをフロントマンからお聞きすることも多いです。

 そんな事情で管理委託費の値上げを通知されるケースが増えています。
 私自身も今般、そのような現場に遭遇しましたので、今回は費用の値上げを打診する管理会社の都合・思惑について考察してみたいと思います。

 管理会社はサービス業であり、モノを製造したり仕入れたりするわけではありませんので提供価格については流動性が高いです。
 したがって、その時々の経営戦略や受注状況で価格が変動します。多少無理をしても受注したい場合もあればお腹いっぱいの時もあります。
 つまり、全く同じサービス品質であっても価格は一定ではありません。
 また、提供サービスの量と対価のバランスもあります。戸数が多ければ多いほど業務効率がよくなりますし、注文の多い管理組合はそうでない組合と比較して効率が悪いです。

 さらに、おそらくこの理由がメインでしょうが、「働き方改革」の波が社会に押し寄せています。
 長時間労働が嫌われ、きつい仕事が嫌われる、若い人はプライベートを優先しワークライフバランスを最重視するという価値観の変化です。
 当然、企業もその変化に対応していかなければなりません。そういう意味では、管理会社は迅速な対応を求められることになりますね。
 長時間労働、土日の勤務、クレームが多いなど、けっこう泥くさい業界ですから。

 では、値上げを通告された管理組合はどうすればよいのでしょう。

 まずは、管理会社の真意を探ることです。
 今後とも契約の継続を求めているのか、それとも体のいい断りなのか。
 管理会社は契約をやめるなどとは絶対に言いません。法外な価格を提示するのです。
 
 契約の継続を選択するなら次は会計とサービスの見直しです。管理費会計を赤字にすることは許されませんので余裕幅の確認をし、必要なら管理費の値上げも検討しなければなりません。
 次に管理会社のサービスを見直すことにより価格を抑える余地がないかどうかの検討です。この辺りのやり取りで管理会社の真意も探れるのではないかと思います。

 そして、もう1つの選択肢は現管理会社との決別です。
 その時点でその管理組合にとってのベストの管理会社を探すことになります。
 それまではその管理会社がベストパートナーだったのかもしれませんが、価格バランスが崩れたことによりもはや関係性は変化しているのです。

 予算内での新会社を探すのも1つの案ですし、この際ですから委託業務の内容も見直して現在の実情にあわせましょう。
 具体的な方法、考え方についてはいくつものパターンがありますので、ぜひマンション管理士にご相談ください。

(石井孝典)