平成30年3月9日、国土交通省はマンション標準管理委託契約書および同コメントを改定しました。
標準管理委託契約書は平成28年7月にも改定されており、けっこう短期間との印象を受けたのと、報道発表に、管理組合とマンション管理業者の間のトラブルを防止する観点から理事会・総会支援業務の記載の明確化を行った、との記載があったため、今回は標準管理委託契約書がどのように改定されたのかをお知らせしたいと思います。
マンション管理業協会も「マンション管理業務共通見積書式」を改定、公表するなど昨今、マンション管理業界は管理委託サービスの線引き、明示を推し進めています。
従来、管理会社のサービスは定義が難しく、本来は業務外のサービスをどのあたりまで提供するかで管理員やフロントが評価される風潮も存在しますから、現場からは環境改善を求める声が出ていたのは事実です。
では改定内容を具体的に見ていきます。
標準管理委託契約書本文の改定として、コメント欄で、専有部分内の設備の修繕対応(共用部分と構造上一体になった部分に限る)を契約に含めることが可能と言及されました。
高齢者の対応を契約に含めることについても費用負担についてトラブルにならないよう留意すると記載され、管理組合だけでなく、個人対応も受け入れていくという姿勢が明確化されています。
また、地味な内容ですが、管理組合から委託を受けて行うコミュニティ支援として、美化清掃、防災・防犯活動等の企画立案・実施支援が例示され、場合によっては管理会社主導でコミュニティ活動を実施するマンションも出てくるのではないかと思いました。
次に別表(具体的な業務内容)についての改定ですが、管理組合支援業務のコメント欄で、理事会や総会にフロントや管理員を出席させるときはあらかじめ出席時間の目安や頻度、実施が深夜に及ぶ場合の対応等を定めておくことが望ましいと記載されました。
議事録についても作成時の内容や作りこみ精度に言及し、一言一句を記載するものではない、と明記されました。
モンスター役員の対応に日々、苦慮している現場の声が聞こえてくるようです。
管理員業務のコメント欄では、緊急時の時間外対応や病欠等のやむを得ない欠勤について、協議によりあらかじめ規定しておくことも考えられると追加されました。
このような規定はすでに用意されている管理委託契約書が多いと思いますので、これについては当り前という感想です。
清掃業務では、今までは特別清掃と記載されていたものが定期清掃と名称変更され、業務の内容という欄が新設されました。
当然の改定であり、逆にいえば今まで清掃というだけで業務内容が明確でなかったことを実感しました。
その他にも改正個人情報保護法の対応や反社会的勢力の排除など、時代に即した改定や細かな修正が行われています。
個人的には前回改正時ほどのインパクトはありませんでしたが、正常進化というか的確な改定が実施されたとの印象を受けました。
契約の締結はデリケートな面があり、もちろんなるべく書面に記載することが望ましいですが、なかなかすべての内容を契約書に反映させることは難しいです。
マンション管理業界も従業者の確保や働き方改革の対応のため、色々と対応している姿が垣間見れた気がしたような今回の改定でした。
(石井孝典)