マンション管理新聞7月15日号に興味深い判例が紹介されていました。
マンション1階専用庭で野菜の露地栽培を始めた区分所有者が、管理組合から管理規約・使用細則違反だと指摘を受け、規約等に違反していないことの確認などを求めた裁判の判決が、昨年東京地裁で出されたというものです。
判決は確定したそうですが、結構ヘンテコな判決だと感じますので、その判決を紹介しながら私の感じるところを記載したいと思います。
まず、この専用庭には入居当初から芝が張られていたそうですが、芝から菜園に変更したことについては、『形状の変更や美観を損ねるといった規約等の禁止事項に菜園(露地栽培)が該当するとは言えない。専用庭部分の経済的価値を考慮すると、専用使用権者の利益にも十分配慮する必要がある』(以下、『 』が判例の要約)との判断です。
う~ん、違和感が・・・
はっきり言ってこの場合、経済的価値は関係ないでしょう。高い金を払っているから斟酌すべきなどという判断は共同の利益という考え方に相容れないと思います。
そして、芝から菜園に変更したことが規約等の違反とはならないことは(悩むけど)概ね支持します。
わかる人はわかると思いますが、芝の維持って想像以上に大変なんですよね。毎週のように手入れが必要で、手入れしないとすぐに見た目が悪くなります。
実は私も昔、賃貸で専用庭付きの部屋に住んだことがあって、庭はボウボウでした。大家さんに注意されたくらいです。でもその時は忙しかったし、緑に興味もなかったです。関心の低い人ってそんなものです。
したがって、芝を手入れせず荒れた場合規約等違反を問われず、菜園にしたことで形状変更(規約違反)となるということは妥当性が低いと思います。
あくまでも、共同の利益に反するかどうかがポイントになると思います。
そしてもう1つの解釈として、菜園で使っている支柱やビニールハウスが『避難通路に指定されている部分に、これらのものを設置することは規約等に違反することが明らか』で、それら『定着物』を使用しない限りで認められるそうです。
定着物って・・・支柱やビニールシートが定着物ですか?
まさか本格的なビニールハウスは専用庭で設置できないでしょうし。
専用庭やバルコニーでプランターを使って花や野菜を育てることを規約等違反だ、と目くじらを立てる人はいませんよね。
プランターでも花や野菜用の支柱を立てるんですけど・・・
プランターは可動、つまり定着物ではないから問題ないのだと思いますが、家庭菜園(しかも専用庭でできる程度)の支柱なんて蹴とばせばすぐに倒れるので非常時には避難の邪魔にはならないと思いますけど。
判決では支柱などを使わない範囲であれば菜園として使えるそうですから、実際問題として背の低い野菜のみ栽培できるということですね。
イモ類はまだ大丈夫としてネギ類は匂いが気になる人がいると思いますが、それは問題ないのですね。
なんか、どうも着眼点が違うような気がしてなりませんが、これも判例です。判決文の全文が見たかったですが、探しても見つけられませんでしたので仕方がないです。
専用庭はたまの外での焼肉が迷惑かなど結構判断に迷うことが多いです。
家庭菜園が迷惑だと感じる人もいるかもしれないので、アンケートなどを取り、禁止するなら規約等に明記しておいたほうがよさそうですね。
(石井孝典)